いまおかしんじ監督、スペシャルインタビュー全文公開!
- 6月12日
- 読了時間: 10分
監督30周年を迎えられたいまおかしんじ監督に、
映画『死神バーバー』への想いやキャストの魅力について伺いました!

ドラマ化からの映画化ですが、梅木さんの原案のどのような点に惹かれましたか?
また、映画化にあたって最も大切にしたことは何でしょうか。
原案の梅木君は当時はまだ日大芸術学部の学生だったんですよね。 彼が授業の中で書いた企画を「映画にしよう」とプロデューサーの直井君たちが形にしていったのですが、それ自体がまず凄いことだなと。 梅木君は韓流ドラマがすごく好きで、韓流ドラマのように「死神が美容師をやってる」っていうファンタジックな設定は、コロナの時に人と会えなかったり、お見舞いに行けなかった状況をキッカケに考えたらしいんです。
最初に企画書を読んだとき、荒削りではありましたが、まずタイトルがいいと思ったんです。「死神が美容室をやっていて『死神バーバー』ってそのまんまやん!」と(笑)。
だけど、すごくスッと入ってくるし、映画の内容がすぐにわかる。
また、人が亡くなってそこからどうなるのかっていうのがこの作品の展開・肝になりますが、そこは僕がここ20年くらい「人が死ぬこと、そして生きている人がそれをどう受け止めたらいいのか」ということを割とテーマとして持っていたので、それをどんな風にエンタメ作品としてやっていけばいいかというのをずっと考えていました。
今回の企画は、そういうことができるかなと思い、スタートしました。
桜井日奈子さんについての印象や、演出する上で感じたことがあればお伺いできますと幸いです。
最初の打ち合わせで会った時は、すごく落ち着いてる人だなと思いました。
僕がトンチンカンなことを言っても、動じないでちゃんと人の話を聞いてくれる人だと感じたので、現場を共にする安心感がありましたね。何を言っても受け止めてもらえるというか。
それから、映ってる時にちゃんと緊張感があるんです。変な言い方ですけど、彼女ってオーラを出す時と出さない時がある。普通に喋ってる時はオーラを出さないんだけど、芝居の中に入るとすごいオーラが出てくるっていう切り替えにはすごく助けられました。集中力がすごいんです。
編集している時に気付いた点としては、いろんな顔をしてるんですよね。驚いた時とか笑ってる時とか泣いてる時とか、すごく魅力的ですよ。なかなかそんな色んな表情はできないと思うんですけど、ちゃんと芝居に残していく。だから見てて楽しいですよ。
日穏さんの印象や演出について伺えますでしょうか。
本当に一緒にやってて感じたんですけど、素直なんです。彼もまたちゃんと人の話を聞く人。普通に話しているときは何考えてるか分からないところはあるんですけど(笑)、それが死神にぴったり。
だけど、そうでありながら若くて素直でちゃんとこちらが思ってることを汲み取ってくれる。やればやるほど分かられちゃうんですよね、こっちが思ってることとか。そんなにお芝居をたくさんやってるわけじゃないんでしょうけど、若くて素直で何でも吸収していって初々しい。だから、このタイミングで出てもらえて出会えたっていうのはすごく良かったなと思います。俺も変なことばかり「やって!やって!」って指示しちゃうんですけど、そういうのが自然にできるんですよね。彼が本来持ってるセンスなのかもしれないですけど。
岡部大さんについても教えてください。
岡部さんは最初はどんな演技をするか僕も分からないでいました。台本があってある程度のこうしなきゃいけないってことはあるのですが、「ちょっと踊ってみようか」と指示した時に、「踊るんすか!?」と驚いていましたが(笑)いざ踊り始めて、そのシーンがオッケーになったら、次のシーンではもう勝手に踊ってるんですよ。「あ、さすが芸人さんだ」と思いました。
最初は彼もどこまで自分がやっていいのか分からないでいるんですが、「ここまでやっていいんだ」とわかるとどんどんやり始めるんですよね。それが面白くて、周りもそれに引っ張られて、「じゃあ俺も踊っちゃおう」となっていた。段々現場がむちゃくちゃになっていって、それをスタッフがまた面白がって撮って。「ここから撮ったらどうや?」みたいなことを撮影部が言ったりして、そういうことを率先して岡部さんがやってくれた。さすがだなと思いました。
先輩死神・マツオカ役で親交の深い山下敦弘監督にご出演いただいた経緯を教えてください。監督同士という関係性ならではの演出はありましたか?
先輩たちが飲んでるシーンで誰をキャスティングしようかってなった時に、最初は死神にもいろんな人がいるよねってみんなで話してたんです。
死神と言っても子供だったり、おじいさんだったり、女の人もいてもいいよねって話をして、でも「子供だとちょっと狙いすぎじゃない?」となり、そんな中で、映画監督も『人間をフィクションの世界へ連れてく』という点で、死神の役割の要素があるんじゃないの?という話になりました。あと、映画監督はみんな意外と芝居できるんですよ。顔構えも結構いい人が多い。特に山下君は髭のインパクトあるし、過去に彼の作品に僕が出たりもしてるので、今回は出てもらおうと。死神たちのシーンは僕がホッとする時間というか、楽しんでやれました。
演出する上で印象的だった、あるいはこだわったシーンはありますか?
基本的にみんな(特に俳優の方々)がのびのび・自由に・いい意味で適当にできるように、枠にはめてやるのが嫌いというか面白くないと思うので、失敗してスベってもいいから色々やってみるように演出していました。でもやっぱり俳優陣はそれを超えてきますね。すごい好きなカットがあって、最後宇野祥平さんと工藤遥さんが別れるシーンがあるんですけど、その時の工藤さんの「さよなら、リンリン」のところ。あの表情はなかなかできないし、言ってできるものじゃないです。「うわぁ…」と圧倒されました。
そういうのがいくつものシーンであるんです。「そうなるんや!」という小さな奇跡みたいなものを引き出したいと思っていました。
また、撮影部に達富君という若いスタッフがいるんですけど、例えば2人が別れるシーンで焼肉屋から出てくるっていうシーンで、普通は引き画で撮って入り口のドアが開いてガチャって出てくるような撮り方をするんですけど、達富君は「足撮っていいですか?」って言うんですよね。歩いてきて別れるまで2人の足しか撮っていないんです。
別れがたい2人を足で表現するんですよね。「なるほど」と思いました。
みんな1つのシーンでも、映画全体で色々考えてるんだなと思って。僕も考えてますけど、みんな勝手に面白がって、そういうのが上手いこと合わさったときに、奇跡的な何かが映るんじゃないかなと思っています。
撮影・録音・照明・音楽など、若手のメインスタッフが多かったと存じますが、
若手の皆さんとタッグを組むことで良かった点や新鮮に感じた点はありましたか?
脚本の谷口君もまだ若いんですよね。若いってやっぱりいいですよ。キャリアを積むと失敗するとわかることは避けるじゃないですか。でも若い彼らはそこを避けないで突き進んでいくんですよね。
10のうち9は失敗するんですけど、1はすごい成功するんですよ。1成功すればいい・9はこっちがフォローすればいいと思っていたので、なるべくしたいようにしてもらいました。
大体、僕が「オッケー!」って言っても、撮影の達富君が「いや、もう一回!」って言ってましたからね(笑)録音部と達富くんが「監督がオッケーって言ってるんだからオッケーだろう!」「いや、もう1回です!」みたいな感じで揉めていたり、あいつら生意気なんですよ(笑)
でもそれが面白いというか助けられました。やっぱり、若い奴が好き放題やった方がいいと思います。僕は「もう好きにして、責任は俺が取るから」と全体のバランスを調整する。それが一番いいし、何より僕自身も楽ですからね(笑)。
サクマが不思議な動きをする演出には何か理由がありますか?
台本に「歩く」と書いてあったら普通に歩いてくると思うんですけど、死神だから人間とは違う歩き方にした方がいいんじゃないかなと思ったんです。「どうすればいいんですか?」と聞く日穏君に、「じゃあここでステップ踏んでみて」「はい!」「意味は分からないけど……あ、ちょっと死神っぽいかも!」なんて、2人で「死神らしさ」をすり合わせていきました。
「死神だ」というセリフはポーズあった方がいいよねってことで、鎌(カマ) のポーズになったんですけど、「『アサー!』にも決めポーズがあった方がいいんじゃない?」となった時も、「やってみてよ」「アサー!」「オッケー!」「え、本当にこれでいいんですか!?」「大丈夫大丈夫!」といったやり取りがあって。お互いに調子に乗って作っていきました(笑)。
でも何か足りない時は言いますよ。悪ノリでお笑いになってしまったり、わざとらしく見えたりしたらダメなので、「ここはシリアスにいこう」「すごく自然に見えるように、チクショー!という感情の動きで」とすり合わせながらやりました。
本作で最も伝えたいメッセージやテーマは何ですか?
人生は何があるか分からないんですよ。良いこともあれば、すごく悪いこともある。 何があるか分からないけど、でもそれが面白いし、生きてるってドキドキするということ。だから「とりあえず、生きようよ!」というのはメッセージとしてあります。
あとは、「もしかしたら死神がいるかもしれない。」「死神と5日間くらい一緒にいなきゃいけなくなるかもしれない」そこで起こる出来事が、後々記憶に残って、「バカバカしいけど面白かった」と思えるような映画の時間になったらいいなと思います。自分は経験してないけど、「こんなことがあったらちょっと面白いな」みたいに
普段はテーマや伝えたいことを掲げてやるってタイプではないのですが、結果として、この映画を観た方が、すでに亡くなってしまった大切な人のことをふっと思い出すような、そんな時間になればいいなと思っています。
監督30周年の作品ですが、監督人生の中でこの作品はどのような位置づけになるでしょうか?
これほど若い人たちとやるっていうのも初めてで、すごく新鮮でした。「あ、俺もこういう映画ができるんだ」と思いました。色んな人と出会って、この作品をやろうと言ってから企画完成までかなり時間はかかってるんですけど、出来て良かったなと思います。
映画1本成立するのって、トントン拍子にいく時はいくけれど、 いかない時は本当にいかないので。
だけど、30年映画監督をやってきて、この作品で「面白いことはまだある」ということを教えてもらった気がします。作品ごとに毎回違う形・違うテーマ・違う人で撮ってるんですけど、学生が書いた企画から始まり、最終的にここまでの形にたどり着いたっていうのはすごい奇跡みたいなものだと思うので、関われたのは本当に嬉しいですね。
本作の公開を控えて、今のお気持ちをお聞かせください。
また、映画を観るお客さんへ、一番伝えたいメッセージは何ですか?
人生、基本的に頑張っても上手くいかないんですよ。僕自身がそうですし、きっと他の皆さんもそうじゃないかなと思います。大体は、辛いんですよ。1年間で1日くらいはいいことあるんですけど、後の364日くらいは上手いこといかない。また頑張るんだけど、方向を間違えたりしてみんなバカだな~と思うんです。
だけど、そういう奴らを抱きしめたくなるんです。そういう奴らというか、俺を。
しんどいけどなんとかこの先も生きていくには、何か必要で、それが僕にとっては映画だったり、小説だった。この世の中には「大丈夫!大丈夫!」って言ってくれてる人がいるんですよね。
そういうものに触れて僕は勇気づけられてきたので、そんな風に僕が新しく作ったこの『死神バーバー』も他の人の手助けになればいいなと思っています。僕が今まで助けられたように。



